スウェーデンでの妊娠、出産、育児、それらを取り巻く社会環境

ヨーハンというパートナーを得てから、「いつかは子供を持つだろうなぁ〜」と漠然と思って いたことが、予定外(大体そういうものなのでしょうが。。。)の妊娠で目の前の現実に。ただ、 日本にいた時には絶対に子供を産みたくないと思っていたのが、話には漠然と聞いていた"スウェーデン の社会制度"がどういうものかを実地で体験できる機会となったので、割合自然と前向きに今回の 事態を受け止めることができました。もちろん、かけがえのないパートナーの存在も大きな後押し にはなっていますが。。。

このページは、育児休暇に入ってからリフォームする予定です(ただし、あくまで予定です^^;)。私は夏至祭(今年は6月26日)の週から休み(実質上の産休、引き続いて育児休暇(mammaledig)に入ります)に入り6ヵ月くらいを目処にと考えています。スウェーデンでは両親合わせて1年半の育児休暇が取れますが、先に私が6ヵ月取ったあとヨーハンに引き継いで2005年早々から学位論文をとりまとめようと考えています。
−その後−カーリンが生まれてもう1ヵ月が経ちました。リズムが出来てきたとは言えまだまだカーリンにかかりっきりで自分の時間は本当に細切れで見繕う状態。ホームページ完全リフォームの意志はあるのですが、、、本当にいつになることやら。トホホ。。。


【最近 (2004/08/11)】

近況として、"今週のカーリン"をアップしています。→ (ページを移動します)

【番外編】

妊娠が判明したのが咋秋。あと1年ちょっとで学位論文をまとめなければと思っていた矢先でした。 "どうしようかな。。。"と思いましたが、「授かり物」と思い産み育てる覚悟を2人でしてからは 現実問題が早々に出て来ました。
私達はそれまでsamboであって、結婚はしていなかったので生まれてくる子供はそのままだと "婚外子"。スウェーデンでは全く問題にならないのに、日本では役所手続きで厄介になることが 予想されたので、まずは正式に「結婚」することにしました。
  1. 婚姻要件具備証明書: hindersprovning発行のために必要な書類。大使館に依頼し発行してもらうもので、結婚する日本人の身分(特に婚姻年齢に達していて現時点独身であることがこの際重要)を証明するもの。書類作成+郵送料で56SEK。
  2. hindersprovning: 多分日本には相当するものがないので訳するのが困難なのですが、結婚する当人達が、1)近親でない(半兄弟姉妹でもない)、2)婚姻年齢に達していること、3)独身である、ことを証明するもので、結婚する時に担当司祭(教会婚)、担当行政官(市民婚の際に結婚式を執行する資格をもつ人)に提出するもの。この証明書はfolkbokförning(国民登録)のオフィス(大抵skattemyndighet/skatteverket(税務署)管轄内にあります)で発行してもらいます。
  3. 結婚または登録に伴う氏名(変更)届: 例えば、スウェーデンで「名、旧姓(中間名になる)、夫の姓」を名乗りたい場合は、国民登録事務所に行ってパスポートの"別姓記載"を示す必要があります(ただし、パスポートの記載が「名、旧姓、夫の姓」になっている必要があります)。必要書類はhttp://skatteverket.seから直接ダウンロードできます。
いつかはヨーハンと結婚することは考えていましたが、結婚していないことに伴う「認知届」(日本側のみ)とか が面倒臭かったのと、結婚しない特別の理由がなかったので結婚した次第です。が、国際結婚はやたら手続きが 面倒臭いのは確かです。私達の場合、特殊な地理条件(キルナというスウェーデン最北部の町、タイ人やロシア人 とスウェーデン人の結婚は扱ったことはあっても日本人とスウェーデン人の結婚を扱ったことは、ここの 国民登録事務所はこれまでなかったようです)のために、スウェーデン外務省に結婚に関する日本国民事法の 翻訳まで依頼する羽目に!(これは、200SEKもかかった!!!)
ともあれ、無事に結婚できてあとは子供の誕生を待つだけ。


【妊娠初期(〜16週)】

ここで告白すると、ピルを使っていても妊娠する時は妊娠する!です。ただ、私の場合、それまで使っていたピルの作用が弱くなっていたようで(生理がかなり不規則になっていました。。。)、ピルの処方をし直してもらったばかりの矢先でした。〔教訓〕計画妊娠を考えている人はピルの作用・効果は正しく把握しておきましょう!
妊娠に気づいたのは、いわゆるmorning sickness、朝起きた時の"つわり"が妊娠4週目くらいに始まってから。それから生理がこなくて初めて病院の婦人科に検査を申し込みました。スウェーデンでは妊娠しているかしていないかはドクターが調べますが、自分で市販検査薬で調べていたり絶対に妊娠が確実であれば(と言っても検査申し込みの所見だけという場合がほとんど)、受け持ち助産婦(barnmorska、midwife(英))がすぐに割り当てられて第1回目の検査の日程が決定します。今後全ての定期検診は自分の助産婦さんがやってくれることになります。

それにしても、、、今考えると妊娠初期の"つわり"はそれなりに辛かったです。仕事しているときは割合に大丈夫でしたが、夕方帰宅してからは座っているのもつらくて夕飯はそこそこで早くから横になっていることが多かったです。それでも"つわり"にも波があって、何ともない時はヨーハンと一緒にスケートしに行ったり、コースに出てクロカンをやっていました。「妊娠初期はなるべく安静に」と言われていますが、適度な気分転換(スケートやクロカン)はそれなりに私には良かったです。特に流産なんかの危険なんかもなく妊娠初期は無事クリアーしました。

ただ、クリスマスシーズンに近い時の定期検診は、日本では妊娠初期では1ヵ月毎と決っているのに対して、クリスマス1ヵ月も前の第1回目(血液・尿検査、助産婦との面接による病歴等の調査)とクリスマス明けてしばらく経ってからの12週目の検診だけでした。さすがにこの検査の少なさは精神的にきつかったです(それとも、日本の妊娠検査システムが過剰すぎる!?私は日本でのシステムは全く知りませんが)。ただ、ヨーハンだけ、「あー、大丈夫大丈夫!心配ないって!」と能天気でした。彼にはまだ"父親"になる自覚ができていなかったようなぁ。。。

  1. 妊娠定期検査: 妊娠かも!?と思ったら市販検査キットで早速チェック(graviditetstest)。陽性と出たらすぐに婦人科での定期検査の申し込みを(場合によっては第1回の検診まで1ヵ月近く待たされることもあります)。ただ、スウェーデンでの妊娠定期検査は基本的に全て無料(自営業者は納税システムの違いで有料になることもあると聞いていますが、確認はしていません)。
  2. 妊娠初期の過ごし方: 危険なとか要観察の妊娠の場合は知りませんが、普通は私のように"ほったらかしの状態(と私は思いました)"で過ごすようです。ただ、私にとっては初めてしかも海外という事情があって必要以上に神経質になって、1回目の検査でもらった小冊子(Vänta barn、"赤ちゃんが来るまで"とでも訳しましょうか)を隅から隅まで何度も読みました。今なら言えますが、母子ともに問題がなければそれまでの"普通の生活"を続けることがスウェーデンでは(暗黙のうちに)奨励されているようです。
  3. 私事: 日本にいるときは、13歳の時に受けて失敗した盲腸の手術の後遺症で、極度貧血症(ヘモグロビン色素量が最悪の時で正常値の40%)にいつもつきまとわれていましたが、スウェーデン・キルナ(世界でも第1級の高鉄含有量の鉱石を産出する鉱山で有名)に来てからは自覚症状が全くなくなり、しかも妊娠検査第1回目では正常値をかなり上回る「全く問題なし」でのスタートを切ることができました。特に食生活で気遣ったことはありませんが、ヨーハンも私もジャンク・フードは嫌い、平均的なスウェーデン料理(ただし、肉食に大きく偏らない野菜・果物もバランス良く摂る)を心がけているのが結果的によかったのだと思います。
  4. 追加: 当り前ですが、妊娠中の酒、たばこは厳禁です。私は元々たばこの匂・煙には強い拒否反応があり、酒はたまにヨーハンとワインを半瓶/1回の食事 であける程度だったのと"つわり"と前後して体が全くアルコールを受け付けなくなったのとで、こっちの問題は全くありませんでした。ただ、アルコールと同じくして体がコーヒーを受け付けなくなって今でも紅茶か緑茶で fika している状態です。ヨーハンが典型的な"コーヒー好き(しかも専用ヤカンで沸騰させる koktkaffe 愛飲者)スウェーデン人"なのを考えると、お腹の中の赤ちゃんはやっぱり半分は私の血を引くみたいです。

【妊娠中期(〜28週)】

妊娠16〜17週目に超音波検査で、初めて胎児と間接対面。それまでは「ちゃんと赤ちゃんの恰好して育っているかしら」と始終心配でしたが、子宮の中でちゃんと赤ちゃんらしい恰好で育っている生命を見た時は、安心と感動を一度に感じたものです。この時、ヨーハンもやっと"父親"になる自覚が持てたようです!ところで、この超音波検査で初めて妊娠周期が確立しました。頭部の大きさと膝下の足の長さから推定された妊娠周期はいずれも誤差なしの19週と2日。出産予定も7月21日から修正され、「7月7日」と再算出されました。

この超音波検査と前後して"つわり"は嘘のようになくなりました。そして、見た目にもお腹がふっくらしてきたのが分かりました。"つわり"と一緒に頻繁にあった"胸やけ"もほとんどなくなり、食欲が元に戻っていくのが分かりました。 ただ、多少の好みの変更はありましたが(コーヒーは相変わらずダメ、酢系の食べ物はダメだけど柑橘系は以前より好むようになりました)。

体調も元に戻ると、待ってました!というようにヨーハンと一緒によく週末ツーリングスキー(山スキー)をしに出かけるようになりました。季節も2、3月のかなり明るくなって雪も存分にある頃。ただ、転んだりきついことはしたくなかったので、山スキーと言っても"歩く"方に重心をおいたスキーです。

  1. 妊娠定期検査: まだ1ヵ月毎の検査。しかも検査といっても、血液検査は2回に1度あるかないか。ほとんどは助産婦との面接(食生活のこと、妊娠期の運動など全般的なことを話し合う程度)、あとは助産婦さんによる腹部の触検、胎児心音の確認と言ったところ。私達の赤ちゃんはごく正常に育っているようでこれは何よりのこと。ところで、ヨーハンはほとんどの定期検診に同伴してくれています。定期検診だけなら妊婦さん一人というのがスウェーデンでも普通ですが、何かしら彼なりのポリシーを持って検査には律義に同席してくれています。まぁ、私のスウェーデン語が完璧ではないので彼が同席していてくれることで、補ってもらえることがあり、私は精神的にも実質的面でも大いに助けてもらっています。
  2. 妊娠中期の過ごし方: この時期も全く問題なかった私は、初期以上に"普通の生活"を送りました。ただ、運動は"歩く"スキーとかクロカン程度で、週末に最長でも10kmする程度のものに抑えていました。胎動は初めての妊娠で20週目くらいから感じ始めると言われていますが、私は超音波検査を受ける前、つまり19週目より以前から何か下腹部で"もぞもぞ"する感じを感じていました。
  3. 私事: 特に妊娠に関して問題らしい問題もない私ですが、一つだけ悩まされていることがあります。それは「皮膚の痒み」。それでなくても、冬のスウェーデンは乾燥が著しく入浴した後は絶対に全身クリーム(しかもオイル系)が必要な私が、皮膚の乾燥とは別に「痒み」でこの冬は相当悩まされました。これは、妊娠に伴うホルモン分泌に関わるものと聞いていますが、助産婦さんにも「普通にあること」と言われて特別な処方もないまま、今もこの「痒み」を抱えています。あまり酷くなることはありませんが、痒みで皮膚を掻きむしらないように、ヨーハンによく背中だけでなく全身をマッサージと合わせて「掻いて」もらっています。

【妊娠後期(〜40週)】

私達の結婚式がちょうど妊娠後期初めと重なったようで、その頃私の食欲は一時的に増しました。結婚式に出るためにスウェーデンに来ていた母に「赤ちゃんをあまり大きくしちゃダメよ!」と言われるくらい食欲があったようです。ただ、この食欲も2週間したらぱたっとやんで、再び"胸やけ"が頻発するようになり食欲は減退。

この頃の私達の食生活は、★朝食ー妊娠前と変わらずレーズン入りの大麦・ライムギ混合のお粥(havregryn/rågflingor grött med rusin)に、リンゴンのジャムをのっけて牛乳で食べる、★朝のお茶(förmiddagsfika)ー研究所のレストランで毎朝焼かれるパン1個をヨーハンと半分個してチーズをのっけて(バターなし、ただしたまにマーマレードをチーズの上にのっける)、紅茶もしくは緑茶と一緒に食べる、★昼食ー研究所のレストランで普通に日変わりランチ(dagens)を食べる(大抵ヨーハンと一緒に食事をするので彼も同じものを食べる)、★午後のお茶(eftermiddagsfika)ーシナモン・パン(kanelbulle)1個、焼き菓子(kaka)の小片、あるいは果物とお茶、★夕食ー普段はサンドイッチ(makkor,smörgåsar)、或はシリアルとフィール(müsli och fil, fil=thin yoghurt)、或はフルーツサラダ等で済ます。と言った感じです。

妊娠30週目あたりからぐっとお腹が重たくなったように感じ、普通の階段の登り下りで息切れしたり、午後猛烈に眠気を催したり、夕方はお腹が張ってお尻や足の付け根が痛い、というのを頻繁に感じるようになっています。それと同時胎動も格段に多くなって、特に午前中はそれはそれは良く動くと言った感じです。むき出しのお腹を見ているとお腹がぽこぽこと出っぱったり波打ったりして面白いです。「蹴られる」という感じではなく「ぼこぼこ蠕く」っていう表現の方が私の赤ちゃんにはあっているようです。

さて、そろそろ名前を考える時期かな。。。と漠然と思っています。名前のリストは早いうちから色々作ってはいましたが、"スウェーデンでも日本でも通用する名前を!"とヨーハンが考えているので、かなり難しい作業になっていてまだ確定した名前は決めていません。今のところ、私達は赤ちゃんのことを lillan(the little、ただし女性形)と読んでいます。もしかしたら、lillen(男性形)かも知れませんが。。。ちなみに、私は赤ちゃんは"男の子"だと思っています。超音波検査の時に胎児の性別を確認することもできましたが、私達がそれを望まなかったので生まれてくるまで性別は不明です。さーて、どっちかな!?

今週からいよいよ最終月(臨月)(6月13日)です。ここにきてお腹がまた少しせり出してきて、お腹の張りは四六時中。ちょっと辛いです。。。油断していたら妊娠線らしいものも出ていて(私の場合、失敗した盲腸の手術痕から放射状に出ています)ちょっとショックでした。

胎動は短い間隔(20〜40分くらい)で来て、しかも結構激しいです。夜眠ろうとしている時に下に している脇腹あたりでモゾモゾ動かれたり、子宮全体で"グルン"と音が出そうな大きな胎動があったり、 一番奇妙なのは、動きが激しいとよく"プチ、プチ"と泡がはじけるような音がすることです。 こうなると寝つきたくても寝つけない。。。しかも元々早起きが4時半とか5時に目が醒めてしまう有り様。 既にキルナは midnattsol (真夜中でも沈まない太陽)の季節。何時に起きようがあまり関係ないかも 知れないけど。。。


上掲の写真は38週目です。こうこれ以上大きくなってくれるな!と切実に思うくらい重かった。。。(それでもカーリンは平均的な体重・身長で生まれてきてくれましたが。と言うことは、余分についた脂肪!?)37週目にボーレンゲに移動して、37、38週はヨーハンの両親(特にヨーハンのお母さん)にあれもこれもしてもらって、ここでさらに体重が増えたかも。

  1. 再血液検査: 問題があった訳ではなく、これまでお世話になったキルナ(を含むノルボッテン全県)の婦人科(正確には、mödravårdcentral、MVC、母性ケアセンターとでも訳しましょうか)と、ボーレンゲ(を含むダーラナ全県)の妊婦の血液検査のシステムが違うということだったので、モーラ(産院はここにあります、と言うかここの産院を希望しています)に送付するためだけに血液検査だけしなおしました。
  2. 妊娠後期の過ごし方: 正直38週目に入ってもお腹が下がってきたという感じはしませんでしたが、散歩する時はそれなりに辛かったです。いわゆる亀の歩み状態でしか歩けない。しかも、寝る時が最悪。普通に横向きになるだけではなぜかしんどい。と言うことでちょっと薄めのクッションをボテ腹の下に敷いてみたら、、、これが凄く快適でした。38週目は頻繁にお腹が張ってその度に仮眠を取っていたくらいです。
  3. 私事(2): 妊娠中を通じて唯一のトラブル<皮膚の痒み>。36週目くらいからおへそ回りと盲腸の手術痕の痒みが我慢できないくらいになってきて、、、で気づいてみたら、凄い妊娠線の数。痒くて掻くからか、妊娠線はへそを中心に半径5〜8cm程度の渦巻き状に出現。

【後日談】

私の予想を裏切って、7月2日、18:10、女児が誕生しました。予定より約1週間早い出産でした。実はアルヴェリウス家ではいつ生まれるかで当てごっこをしてましたが、私は何となく"満月の日に生まれるかも・・・"と思っていました。が、まさにその通りに。あと私は妊娠中ずっと男の子だと思っていましたが、母は"夢の中で女の子が生まれたから、きっと女の子よ!"と言ってた通り、女の子が生まれてきました。(余談:母は正夢や予知夢をよく見る人です。オソロシや)・・・いずれにせよ、カーリンは五体満足元気に生まれてきてくれたので一安心。あとは私とヨーハンでしっかり育児するだけ。


Sachiko Arvelius
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